年金制度改革に関する附帯決議についての声明

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はじめに

 令和7年5月30日に衆議院厚生労働委員会にて決議された「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」に対する附帯決議において、障害年金制度に関して重要な内容が盛り込まれました。
 私たちは、これらの決議内容について以下のように評価し、今後の取り組みに向けた見解を表明いたします。

附帯決議 五 について

不支給急増問題への対応

 附帯決議の五では、「障害年金の不支給が急増したとの報道を受けて六月に公表される令和六年度における認定状況の実態把握のための調査結果を踏まえ、必要な措置を講ずる」と明記されております。
 この「必要な措置」には、不当に不支給と判定された方々への救済が含まれるものと解釈し、また実際に救済を強く求めるものであります。

判定の透明性確保と就労者への配慮

 さらに、「恣意的な判定がなされないように透明性を確保するための検討を行い必要な措置を講ずること」として、判定過程の透明化が求められております。
 特に重要なのは、「『精神の障害に係る等級判定ガイドライン』を踏まえ、就労継続支援B型事業所又は障害者雇用で働く者等について、就労していても、その状況等を考慮し、二級などの可能性がないかを検討した上で等級を判断すること」との記述です。
 これは、現在当事者や支援現場において「就労しているだけで二級認定が困難となり、障害基礎年金受給者の場合は三級がないため直ちに無年金状態に陥ってしまう」という深刻な不安要因の緩和につながるものと期待いたします。

社会モデルの導入

 また、「障害年金制度については、医学モデルのみならず社会モデルも踏まえて、機能障害のみならず、日常生活の状況等を把握した上で障害等級の認定を行うこと」と明記されたことは、前進として評価してよいと考えます。
 これにより、部分的な機能が保たれていることを理由にした不支給判定は許されず、生活全体を総合的に勘案した判定への転換が図られることを強く期待します。

附帯決議 六 について

延長保護等の検討

 附帯決議の六では、「過去に一定の厚生年金被保険者期間がある場合に被保険者資格喪失後にある初診日であっても支給を認める『長期要件』や被保険者資格喪失後の一定期間内にある初診日を認める『延長保護』などを検討し、必要な措置を講ずること」と明記されました。
 この「延長保護」の検討明記は、昨年九月に当協会が陳情した内容でもあり、その実現に向けた重要な一歩として高く評価いたします。

当事者参画の重要性

 「多様な障害種別に配慮し、当事者や関係者の実情を踏まえ、障害年金制度の見直しを進めること」との記述は、先の厚生労働大臣答弁と併せて、当事者を含めた障害年金に関する検討会議体の設置への道筋を示すものです。
 私たちは、この実現に向けて他の障害者団体とも連携しつつ、引き続き要望してまいります。

今後の取り組みについて

 今回の附帯決議は、全体として前進と評価できるものです。
 しかしながら、障害年金の判定に関する問題については、当事者のみならず専門家からも数多くの課題が指摘されており、「恣意的な判定がなされないように透明性を確保する」といった内容は、本来当然であるべき基本的事項にすぎません。

 私たちは、事態の推移を楽観視することなく、以下の点について継続的に注視してまいります。

  1. 六月に公表予定の調査結果の内容
  2. 調査結果を踏まえた政府の具体的対応
  3. 附帯決議各項目の実効性ある実施状況  

 これらの動向を慎重に見極めながら、適切なタイミングでの陳情活動をはじめとする必要なアクションを継続してまいります。
 障害のある方々が安心して生活できる社会の実現に向け、今後とも皆様のご理解とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

参考:附帯決議・動画

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