2025年4月28日(*1)以降の一連の報道により、障害年金申請における不支給判定件数が、2024年度に約3万件に達し、これは2023年度から2倍以上の急増となっていることが明らかになりました。
特に、翌29日の報道(*2)では、日本年金機構の内部資料に基づき、担当センター長の厳しい姿勢の下、支給を抑制する方向へ判断を誘導している可能性や、職員による判定の事前決定を示唆する記載があったことが報じられており、障害年金判定プロセスの透明性・公正性に深刻な疑念が生じています。
当協会は、以前より当事者の皆様の声を通して、こうした障害年金の抑制傾向に対して強い憂慮を抱いておりました。
新規申請の難しさだけでなく、特に「就労(福祉的就労を含む)を開始すると、次回の更新で等級が下がったり、支給が停止されたりするのではないか」という不安の声が日頃から頻繁に寄せられていました。
こうした当事者の懸念は、当協会が2024年12月に実施した独自アンケートの結果からも裏付けられます。
障害年金を申請した204名のうち19名(9.3%)が不支給であり、令和5年度全体の不支給率8.4%を上回る結果となりました。
また、「障害年金受給中に仕事をすると、更新時に等級が下がる、または停止されるという話を聞いたことがありますか」という質問に対し、回答者135名中105名(77.8%)が「ある」と回答しており、多くの当事者が年金支給の抑制傾向を肌で感じ、今後の年金更新に対して強い不安を抱いていることが伺えます。特に、障害基礎年金のみを受給している方にとって、等級が非該当(支給停止)となることは、所得保障の途絶を意味し、死活問題となります。
当協会は、こうした当事者の不安や切実な状況を踏まえ、2024年9月9日には厚生労働省に対し、障害年金に関する陳情を行いました(*3)。
しかしながら、2025年度のいわゆる「40年ぶりの大改定」において、障害年金に関しては全く改革が見送られ、当協会を含む他の障害者団体や日弁連等の専門職団体の切実な要望にゼロ回答という、極めて遺憾な結果に終わりました。
このような行政の消極的な姿勢が続く中で、今回の不支給急増と内部対応に関する報道は、当事者の間にある年金審査への不信感を一層深めるものです。
当協会はまず、一連の報道内容に関して、厚生労働省が事実確認を徹底し、その結果を速やかに国民に対し公表することを強く求めます。
その上で、当協会は障害年金制度に対し、以下の根本的な改革を改めて要求します。
* 第一に、今回の不支給急増を招いた判定基準やその運用に関する問題に対し、原因究明を行い、二度と同様の問題が生じないよう、判定基準をより明確化し、運用プロセスの透明性と公正性を確保すること。判定基準が抽象的で解釈の余地が大きいことや、職員の裁量による不当な判断が入り込む余地があるといった指摘を踏まえ、基準の明確化と運用プロセスの透明化・公正化を図ること。
* 第二に、障害者団体を含む関係者の参加を得て、専門的な見地から障害年金制度全体を議論する場(専門部会等)を早急に設置すること。これは、既に障害年金問題に関わる専門職で構成される障害年金法研究会が厚生労働省に申し入れを行ったように(*4)、喫緊の課題です。
* 第三に、国連の障害者権利条約対日審査総括所見において懸念が表明された年金水準の低さ(59(b)「市民の平均所得に比べて、障害年金が著しく低額であること」)に関し、障害者団体との協議の下で見直しを行う勧告(60(b))を速やかに実施すること。
* 第四に、障害者権利条約が求める社会モデル・人権モデルに基づき、障害基礎年金と障害厚生年金間の不均衡(特に障害基礎年金に3級が存在しないこと等)を含む制度全体の抜本的な改革を行うこと。
* 最後に、これらの改革プロセスにおいて、障害当事者団体がその決定過程に主体的に参加できる仕組みを構築すること。法改正を含め、当事者の実態に即した制度となるよう必要な措置を講じること。
私たちは、障害年金が障害のある方々の生活と尊厳を支える礎であることを改めて強調し、政府がその責務を果たすべく、本声明の要求に対し誠実かつ迅速に対応することを強く求めます。
令和7年(2025年)5月4日
発達障害当事者協会 代表 新孝彦
*出典*
(*1) https://nordot.app/1289557419190518098?c=39550187727945729
(*2) https://nordot.app/1289920749845725980?c=39550187727945729